地図から消された島
広島県竹原市忠海町大久野島

JR山陽本線三原駅から呉線に乗り換え、瀬戸内沿いを約20分ほど電車に揺られると、忠海駅に着きます。
駅からゆっくり歩いて約10分ほどで、忠海港到着。
目の前には目的地「大久野島」が見えます。
フェリーに乗ること約15分ほどで大久島第2桟橋に着き
迎えのバスで5分ほどで「国民休暇村・大久野島」に着きました。
玄関前には沢山のウサギの出迎え、ホッと和やかな感じがします。

明治の中頃まで周囲僅か4Kmあまりのこの島は田畑に囲まれ、のどかな島だったようです。
日清・日露の戦いの為に、島に軍部広島や呉を守る芸予要塞を築かれましたが
幸いにも砲は一度も使われることはありませんでした。
時が過ぎ、軍国主義を突っ走る日本帝国陸軍は、昭和2年(1927年)島民を全て強制移住させ(全7家族)、ここ大久野島に毒ガス製造工場建設を決定、昭和4年(1929年)に毒ガスの製造開始をしました。
化学兵器の危険性は早くから世界の関心を集め、遡ること30年前の明治32年(1899年)にはオランダのハーグで「ハーグ毒ガス禁止宣言」が出され、昭和元年(1925年)には戦時下における窒息性、毒性ガスおよびその他の気体、細菌の使用を禁じる「ジュネーブ議定書」が締結されています。
旧日本帝国はこれらの条約に違反し、密かに化学兵器を造ることに着手しました。
ここでは毒ガスの開発と生産をし、兵器への充填は北九州市の曽根というところで行われ、兵器としての使用は主に日中戦争で中国大陸で使われました。

ここ大久野島に毒ガス製造工場が建設された理由は、海に囲まれていて情報が流出しにくかったことと、東京から離れていて、もしも事故が起こった場合、日本の中心都市に被害が及ばないことが主な理由だったようです。
情報流出という点では昭和6年(1931年)の地図には掲載されているこの島も、昭和13年(1938年)の地図には完全に抹消されていました。
汽車が大久野島の見える地域に入ると、憲兵達が窓のシャッターを下ろすように命じたそうです。

当初従業員は募集により集められ、最盛時には5000人もの人が従事していたといわれています。
もちろん作業内容は知らされず、極秘扱いで、就業時には念書を書かされ、違反した場合には軍法会議にかけられたということです。
昭和16年(1941年)頃から従業員は徴用し、中国や朝鮮からも危険製造ラインに強制徴用したといいます。
女子工員などは風船爆弾の製造に従事したそうです。
また、実験動物にはウサギを用い、ガス濃度判定用としてジュウシマツを使ったそうです。

敗戦後、昭和21年(1946年)に米軍GHQにより毒ガスの処理が行われました。
それは主に「海中投棄」「焼却処分」「防空壕への埋没」の三方法で行われたようです。
工場などの施設はことごとく破壊、又は焼却され、その当時の姿をとどめるものは少ないですが、島内には未だ数多くの残骸が残っています。

昭和22年(1947年)この島は日本に返還され、昭和38年(1963年)全国で初めての島全域が「国民休暇村」としてオープンし、現在に至っています。
この他に「毒ガス資料館」「ビジターセンター」などがあります。


大久野島で製造された毒ガスの種類
種類 陸軍呼称 特徴
ドイツ式イペリット 黄1号甲 これらびらん性毒剤は揮発性が低く、いったん土壌、草木、屋根などに付着すると、強力な毒性を発揮しながら、ゆっくり蒸発していく。
毒剤が皮膚に付着すると2〜3時間後に強度の疼痛を覚え、水疱が発生する。叉強力な浸透力により、呼吸器を通って身体全体に大きな障害を引き起こした。
フランス式イペリット 黄1号乙
ドイツ式不凍イペリット 黄1号丙
ルイサイト 黄2号
ヂ・フェルニールシアンアルシン 赤1号 刺激性のクシャミ剤で、これを吸入すると血液中の酸素吸入機能が麻痺してしまう。
青 酸 茶1号 中毒性。
塩化アセト・フェノン 緑1号 このガスは肺組織を犯し、肺水腫状態となり、死に至らされる。散布されると緑色のガスとなり、比重の重さにより窪地や洞穴に音もなく流れ込んだ。
*大久野島毒ガス資料館パンフレットによる。
ここ大久野島で造られた毒ガスの総量は約6600トンといわれ、終戦直後の米軍調べではこの島に3000トンが残存していたそうです。
現在でも日本陸軍が中国国内で遺棄した化学砲弾は約200万個(推定)あるといわれ、量的には合致するそうです。
その残留毒ガスにより約2000人の被害者が出(2003年統計)、今後もその被害が拡大する恐れがあるそうです。
また日本人に於いても投棄されたガスに触れ、数多くの被害者が出ているということです。



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